映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ウィリアム・A・ウェルマン 監督「つばさ」1735本目

1927年の映画。古い・・・実に古い。
タイトルをどこかで見たのを覚えていて、ツタヤでなんとなく借りたんだけど、白黒なだけじゃなくてサイレント映画でした。

最初はとっつきにくいんだけど、クララ・ボウのお茶目な可愛さ(そして、当時のマンガみたいにくっきりしたメイク)に見入ってるうちに、だんだん言葉のない世界に慣れてきます。時々しか表示されない字幕はもうあてにしないで、言葉のない動画のつもりで見ていれば大丈夫。映像は思いのほか精細で、人物の表情は雄弁です。

クララ・ボウの”おてんば”でコミカルな可愛さ、何かを思い出すなーと思ったら、多分手塚治虫のマンガに出てくる女の子たちに似てるんだな。手塚自身、この頃の映画をきっと見てるから、本当に影響を受けてたのかもね・・・。

大昔のフォード自動車(「流星号」ってなんて素敵なネーミング!)が今の私にはポンコツにしか見えず、その時代の飛行機で大戦を戦うなんて悪夢のように思われるんだけど、空中戦の場面があまりによくできていて驚愕です。CGもコマ撮りアニメも使ってない分、本当に何人か亡くなったんじゃないかと思うような迫力があります。
人間がすごくよく描けていて(こういう部分は、時代と関係ないのですよね)、英雄の悲しみも、お茶目な女性の一途な思いも、切ないけどカタルシスが与えられていて、映画としての満腹感が高いです。

さすが、これほどの古さを超えて淀川長治(懐かしいでしょ)が推してただけのことはあります。
無邪気な彼と彼女の明るさに救われます。(ここで戦争を肯定してしまうから、その後も続けちゃったんじゃないのか〜、というツッコミはせず)

つばさ [DVD] FRT-197

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