映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ケネス・ロナーガン 監督「マンチェスター・バイ・ザ・シー」1747本目

この映画、みんなはどう感じるんだろう、と気になります。
死にたくなることが起きても、雪の降る街はきれいで、生きていれば朝起きてご飯を食べるし、仕事をしに出かける。壊れたままでいても、乗り越えられなくても、そうやって毎日やってく。
ケイシー・アフレック、暗い心を持った投げやりな男をよく演じてると思う。こぎれいにしていて、仕事もしっかりやれてるけど、心が荒んでいるので人と素直に向き合えない。そういう風に、この男自身にも弱点がある、と思えるからこそ、彼の痛みの深さが響いてくる。
元妻に思いを打ち明けられて、受け止める余裕ゼロという状態のあの場面とか、まるで当事者のような痛さだったなぁ。

新鮮だ!と感じる映画ではなかったけど、友達のように彼らのことが心配になる。この痛さを抱えたままどうやって生きていくんだろう。今より沈むこともないし、今より浮かれることもない。10年たっても20年たっても、乗り越えることはないし幸せ!って笑うこともないだろう。それでも生きる。
こんな映画なんで作るんだろう。こういう辛さを抱えたことのない人たちが、興味を持って遠巻きに見るのかな。私は人ごとと思えなくてつらいわ・・・。