映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

アンリ・コルピ 監督「かくも長き不在」1830本目

1960年に作られたフランス映画。
冒頭からスタイリッシュ。無駄がなくスラッとしてる。
リマスター版といっても60年近く前の映像なのに、すごくクリアで本当に綺麗です。そのフランスの街角に今自分がいるみたい。

そんな生々しい映像の中のアリダ・ヴァリは、当時プロフィール通りなら39歳。でも正直なところ、50前後くらいかと思った。「第三の男」の、ハッとするような華やかさが見当たらない・・・。もともと大人顔だけど、設定が「歳をとって疲れて男を待っている女」だから、衣装やメイクもくたびれた感じなのかな。夫と思われる男の登場にときめいて、えりの開いたドレスを着て待つ彼女。もう「瞼の母」みたいで切ない。

記憶のない浮浪者がどういう気持ちでいるか、というのはこの頃はまだ分析?が進んでたと思えないけど、自分に自信をなくしてさまよっている人を、急にもてはやしたり、取り囲んだりしたら、逃げ出したくなるだろうということは想像できる。

昔の映画って本当にあっさり終わるなぁ。清々しいです。終わる際にまた感動させようとかしないの。
98分という短さで彼らの数十年を感じさせるってすごいです。