映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

マイケル・カーティス 監督「ミルドレッド・ピアース」1855本目

1945年の作品。
先日見た西部劇「大砂塵」は1954年なので、それより9年前です。ジョーン・クロフォードこの時39才?(諸説あるそうです)。主婦から起業して大成功しているバリバリの実業家ですが、娘に甘くてスポイルしている。真面目で誠実な前夫と真逆の、金遣いの荒い没落貴族の今の夫が殺されていると警察に通報があり・・・。

大どんでん返しといっても、この映画の中で、人を恨んだり恨みを買ったりしそうなのは被害者と本当の犯人くらいなので、意外ではありません。それより、同様のテーマを撮っても映像の印象が監督によって違うのが面白いなぁと思います。(ちゃんと細かく見るのは私には難しいのですが)ミルドレッドが気丈でまっすぐだからか、映像にダークな感じがしません。夜の場面が多くて全体的に黒が多いのに、なんとなくホームドラマみたいに清潔。
ゴーン・ガール」みたいなひねくれた筋の映画や、無駄なくらい二転三転四転五転する映画を見すぎているので、プロットに意外性はないんだけど、なんとも吸引力のある映画です。

娘を演じたアン・ブライスの演技力もすごい。ワガママ娘はまだしも、まあまあ嬉々として酒場で踊る場面の明るいわびしさとか。「名子役」とか呼ばれてた俳優っぽいなと思って英語版のwikiを見たら、実際子供の頃からラジオドラマとかに出てたそうで、この映画のときまだ16歳。その後日本で誰でも知っているような映画にはあまり出てないみたいだけど、今も存命で89歳だそうです!

ミルドレッドのところで家政婦時代から働いている、黒人メイドが可愛いですね。声がリンダ・ルイス(すごく声域が広いシンガー)みたいで、くるくるとよく働く。

昔の映画、特にこういう白黒映画って、画面エフェクトを見逃さないようにしようとか思わず、ひたすら筋を追って見入っていられる居心地の良さがありますね。(この間見た「ニンジャバットマン」と真逆だな。あっちも好きだけど)

ミルドレッド・ピアース [DVD]

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