映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ロマン・ポランスキー監督「告白小説、その結末」1861本目

邦題がいいですよね。英語のタイトル(Based on a True Story、これも皮肉だけど)よりいいと思います。
見ながらずっと、同監督の「ゴーストライター」と「毛皮のヴィーナス」をつい思い出してしまって、デルフィーヌ(主人公の私小説作家)と一緒に追い詰められたような気持ちに・・・。ポランスキー監督、”後味の悪い映画を撮らせたら世界一”(私が言ってるだけ)の面目躍如。

<以下ネタバレあり>
でも、そうやって入り込み過ぎたため、「エル」にパスワードまで教えるデルフィーヌの不自然さを、単に弱さだとしか思わなかった。最後のサイン会の場面で、エルの幻を見ても気がつかなかった。だって「毛皮のヴィーナス」の女優ワンダと演出家トマの距離感や関係性も不自然だったし・・・(←伏線を読みきれなかった悔いが現れている)

そもそもポランスキーは、なにが”自然か”なんてことを考えて映画を作ってるわけじゃないはず。人が人を追い詰めていく様子、というか、追い詰められていく人間の焦燥を描くことの中毒になってるんじゃないか?

そして主役の二人の凄さ。
心の弱そうな中年の作家役のエマニュエル・セニエは、前作では演出家を追い詰める蛇のような女優を演じた人です。帰ってからその事実に気づいて驚愕しました。演技力ってのはこういうことを言うのか・・・。
もう一人の、キッツイ眼力で彼女を追い詰める”エル(彼女)”を演じたエヴァ・グリーン、見たことあったっけ・・・と思ったら、ベルナルド・ベルトルッチ監督の「ドリーマーズ」の女の子だった。奔放な役柄で、若くて可愛らしいけどなかなか強烈だった。同じ人だと言われれば、なるほどと思う。

とにかく・・・二人の役者さんの凄さを思い知らされた作品でした。ポランスキーxセニエ、最強。このまま死ぬまで二人ですごい映画を作り続けて欲しいです。