映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ジョン・グエン他 監督「デヴィッド・リンチ アートライフ」1867本目

その(どの?)デイヴィッド・リンチ監督(※この映画タイトルではデヴィッド)の、「イレイサーヘッド」までの半生をインタビューしたドキュメンタリー映画

ツインピークス リターン」を見るまで、リンチ監督は、気になるけど底が見えない怖い人って思ってました。
しかしあのTVシリーズは怖くなかった。殺人の場面も多いんだけど、なんか怖くない。
そして、このドキュメンタリーには、映画より怖い彼のアート作品と、彼が成長するなかで出会ってきた不吉なさまざまな物事をつなぐものがやっと初めて姿を見せてきた。(全容は見えない、シッポだけ)
フィラデルフィアって街はそんなに停滞していて、住んでる人がおかしくなっちゃうような街なのか。
家の近所で目撃した裸で口から血を流していた女性。「なんとも表現できない」隣人。(これはリーランドの近所に住んでいた隣人がモデルとされているキラー・ボブの原型?)
地下室で、鳥やネズミが腐敗していく様子をずっと観察していたのを見て、彼の父は心を痛めるけれど、彼自身は「誤解されてしまった」としか思っていない。

不思議だなぁ。やっぱりちょっとおかしいと思うんだけど、自分は普通だと思ってる。
で、普通じゃない人たちも、ちょっと変だけど大枠では普通なんだ。いろんな人がいて面白いね、とざっくりくくって一緒に暮らせばいいんだけど、やっぱりちょっと私としては腐敗は怖いよ〜。

それにつけても、映画の世界が彼に与えられて本当によかった。彼の一番良い部分、美しい部分、最大の才能がそこで活躍できてるから。絵より音楽より映画が一番いいよ。