映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

山田洋次 監督「たそがれ清兵衛」1892本目

しっとりとした詩情のある映画でした。
大泣きさせるんじゃなく、しんみりとさせておいて、ホイッと最後に視点を変えて昔話みたいに終わったのも、考え抜いてのことだっただろうと思います。
でも、認めたくないなぁとも思う。
上司から言われて人を切ることや戦争で犬死にすることが、この映画の中では美しすぎるから。

宮沢りえは美しくて真摯で素晴らしいのに、どうしていつも地声じゃなくて裏声で演技するんだろう。これは本当ではなくて演技ですよ、と、ことさらわからせるみたいに。
美男子の清兵衛を、本当に無精髭だらけの落ち武者に仕立てるんじゃなく、適度に汚してみせる感じもイヤだ。

ストレスが溜まってて何も考えたくないときに、感動の方程式通りの涙を流したいときはいいけど、自分で何かを見つけるというより、ジェットコースターに乗って流れ作業で泣かされるような映画って、どんな大監督が撮ってもやっぱりちょっとイヤなのでした・・・。

たそがれ清兵衛

たそがれ清兵衛