映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

テイラー・シェリダン 監督「ウィンド・リバー」2051本目

力作ですね。ジェレミー・レナー演じるコリーの誠実さとしぶとさ、エリザベス・オルセン演じる ジェーンの、可愛いけど全く甘くない強さ。この二人になら信頼して任せられる(何を?)って感じです。

そうかアベンジャーズか、二人とも。どうりで戦い慣れてる。アベンジャーズ自体は、あまりにも作り物っぽい気がしてあまり積極的には見ないんだけど、あの中のキャラクターをこう言うシリアスで現実的なドラマに持ってきたというアイデアが、多分秀逸だったんだと思う。正しいヒーローの在り方ってどこでも同じなのかもしれない。

ネイティブアメリカンの居住区の人たちって、保護を受けているというより制限を課されてるんだろうか。「自治区」だから強力なアメリカの警察が入っていけない領域があることが、この映画のような問題を生んでいるということなのか。ただ、何にも知らない外国人の私が、この映画だけを見て「アメリカの警察は間違ってる!」みたいに騒いじゃいけない気がしています。

この、アメリカみたいな新しい国の中にある狭い地域の閉鎖性っていうのは、「ウィンターズ・ボーン」を思い出しますね。あっちは「保護区」という枠がないのに目に見えない規律がすごく厳しい。この映画も、もしかしたら何かの制裁だったのかなと思いながら見てしまいました。けど割と違ってた。何もない、誰も来ないところだから鬱屈していた感情が引き起こした事件だけど、犯罪の質としては、アメリカの大都会の片隅で、国が把握してない移民の中で起こっている犯罪に近いんじゃないだろうか?などと思ったりもする。この映画が提起している問題は、どうも複雑で根が深くて、簡単には把握しきれません。

という意味で、目の付けどころの良い映画だと思います。シェリダン監督のこれからの作品も期待してます。

ウインド・リバー(字幕版)

ウインド・リバー(字幕版)