映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

テレンス・マリック監督「ボヤージュ・オブ・タイム」2053本目

映画の種類としては、「コヤニスカッツィ」シリーズの仲間かな。

ツリー・オブ・ライフ」ですでに、マリック監督はだいぶ偏ったところへ行きつつあると思ったけど、この作品はそのままそっちへ進んだ結果、あるいは途上にある作品のようです。

やばいなぁと思いつつも見てしまったのは、ジャケット写真の青い瞳の接写があまりにも美しいから。実際、目を見張るほど、今まで見たことがないほど美しい光景が画面いっぱいに広がるすごい映像作品でした。これは、ひとまとまりの意味を伝える「映画」というより、映像によるアート作品と見ればいいんじゃないでしょうかね。

マリック監督が向かうその偏った方向というのは、ものすごーく原始的な自然信仰、というより、すべてのものを生み出した何か、つまり「母」への絶対的帰依のようなものでしょうか。あまりにもシンプルなのでどの宗教も否定しない。

それにしても、電線も通行人も通りすがりの動物も何もない純粋な映像の数々、どうやって撮ったんでしょうね。かなりCGなのかな。いちいち「意味」を読み取ろうとせずにただ眺める分には、うっとりと一日30分間くらいこの映像を眺めると、心のストレスが取れそうな気もします。興味深い作品でした。