不倫のお話だったのね。田舎からシカゴに出てきたばかりの純情なキャリー(ジェニファー・ジョーンズ)は、工場の作業に馴染めずすぐに首に。列車の中で知り合った男にうまく愛人にされた彼女を見かねて、高級レストランのオーナー、ジョージ(ローレンス・オリヴィエ)が声をかけるが、彼女には妻子持ちだと言えずにいた・・・。
・・・ってこんな素敵なロマンス・グレーに妻子がいないわけないじゃないですか!どれほど物を知らないお嬢ちゃんなんですか。でも、キャリーはうぶなだけで、その後グイグイ追い返して生きるすべを身につけていきます。その一方で、実は純粋すぎて生きづらかったのはジョージのほうだったのでした。
「ロリータ」にしろ「嘆きの天使」にしろ、昔の方が、中年男性が若いファム・ファタールのせいで身を持ちくずす映画が多かったんじゃないか?今は世間的には「かわいそうなのは女のほう」ということになってるけど、家族を持ちながら若い女を泣かせてるおじさんも大勢いそう。昔と今のこの違いってなんなんでしょうね。昔は男が強いのが当然だから、そんな男を堕落させる女の方が悪いと言われた。今は力に任せて弱いものを蹂躙するのは悪い奴だ、と糾弾されるようになった、っていう違いですかね。それはそれとしても、中年男性って今いちばん気の毒な人たちなのかもしれない。この映画を見てると、そんな気もしてきます。
愛や夢のために堕落する男って、逆に美しい・・・。