映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

クリント・イーストウッド監督「運び屋」2156本目

クリント・イーストウッド、さすがに歳とったなぁ。表情や動きの表現の幅に限界を感じます。密売人どもにまるでひるまないのは「俺は軍人だったんだ」という過去の経験からということだけど、するっと抵抗なく運び屋を引き受けたり、繰り返し犯行を続けたい動機が今ひとつピンときませんでした。お金がないから?稼いだお金は税務署に目をつけられそうなくらい浪費します。ピカピカの新車を買い、孫の結婚式に盛大な差し入れをし、「バーにいる全員にごちそう」したりする。人生の締めくくりに、楽しんでやろうという心意気だったのでしょうか。最後に彼は、妻の愛も、自分のために泣いてハグしてくれる娘や孫も取り戻しました。何人も撃たれて死ぬような危険な商売だったけど、この善良なおじいさんが非業の死をとげたりしなくて、よかった。そんなふうに全体的に明るく、深刻さのない映画でした。