なるほど。この監督のことがやっと少しイメージできてきた(単なる主観かつ私見)。
美しいものを描きたいだけじゃないけど、醜いものは一切描かない。外観は端正で、中身がぐちゃぐちゃ、というのはOK、というよりむしろ好む。むしろお行儀よく美しく振る舞う人間の内面に非常に深く着目している。その上で、それを押さえてさえいれば映画のジャンルは問わない。
そういう特徴からロマン・ポランスキー監督を思い出してしまったんだけど、思い出した理由は本当はそうではなくて、エマニュエル・セニエが出てるからかもしれない。あのポランスキーと長期に渡って婚姻関係を保てるツワモノ。この映画みたいな弱さのある女性もうまいし、「毛皮のヴィーナス」みたいな強烈な悪女もお手のものです。
賢すぎる孤独な少年を演じたエルンスト・ウンハウアー、ドイツの名前だけどフランス人。なかなかの魅力ですが、その後まだあまり目立つ映画に出てないみたいです。期待してしまう!
「本の続きが読みたくてたまらない」ジェルマン先生(Germanって書くのね)を演じたファブリス・ルキーニも「すぐそばにいそう」な存在感がとてもいいです。「木と市長と文化会館」の教師、「屋根裏部屋のマリアたち」の資産家でもありました。
オゾン監督って本当にキャスティング贅沢だよなぁ、いつも思うけど。出てみたいって思うような脚本を用意できる人なんだな。
ところで原題は「In the house」って意味なのね。ただ訳しても、密室の中で何が行われているか・・・みたいなニュアンスまで伝えにくい平凡なタイトルになってしまうので、少年が書いている刺激的な文章に視点を移したタイトルになっています。うまいです。