映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

フランク・ロイド監督「戦艦バウンティ号の叛乱」(「南海征服」)2230本目

1935年の作品。クラーク・ゲーブルが「風と共に去りぬ」と比べてそれほど若くもないけど白黒のかなりシンプルな画面。この人は知的でやんちゃで精悍で、いい顔をしてるなぁ。

残虐なブライス船長を演じてるチャールズ・ロートン、すごく見覚えがある。「パラダイン夫人の恋」や「情婦」では裁判官や弁護士の役か。すごく印象的な、マンガっぽい風貌(いや彼をモデルにしたキャラクターがその後描かれたのか)だけど、悪役をやっても座りがいい。この芝居のうまさ、シェークスピアとかの舞台出身かしら、と思ったらやっぱり王立演劇学校出身。なんと、ロバート・ミッチャム主演の「狩人の夜」を監督してたんだ!あの映画もアクのあるノワールで見応えがありました。

現代劇といっても通じるくらいしっかりした演技や構成だけど、どうも、こう、コメディスキットというか・・・モンティパイソンの一コマみたいなテレビっぽい感じがします。いやいやシリアスドラマですから。(自己ツッコミ)

などとのんびり見ていられたのは最初だけで、残虐な船長の船員に対する仕打ちが続いて、どんどん胸くそ悪く(失礼!)なっていきます。チャールズ・ロートン芝居うますぎ・・・。

このベースとなる事件が起こったのは1787年。アフリカ大陸から運ばれてきた“奴隷”たちの食料にする「パンの木」という南太平洋の植物を100本採取するというのがこの航海の目的ということで、イギリスやアメリカでも奴隷貿易が盛んになっていった時期と思われます。この頃の黒人はおよそ人間という扱いではなかったようですが、その当時白人の支配階級は労働者階級の白人たちをこんな風にさいなんでいたのか、と思うと、人間のサガって・・・。黒人差別が問題になる100年以上前のことです。

ため息出るなぁ。。。 

戦艦バウンティ号の叛乱 [DVD]

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