1956年の作品。
いいなぁー。新珠美千代の小賢しい“悪女の深情け”、轟由紀子のおかみさんは暖かくて最高だし、芦川いづみは可憐でかわいい。三橋達也と植村謙二郎は弱いところもあるけど朴訥ないい男。この人たちを見つめる監督の視線のやさしさ。
しかし新珠、三橋、轟はかなり前に亡くなっていて、平成世代の人たちは彼らのことは知らないんだろうな。私たちは詳しくは知らなくても、小さいころみんな見ていたテレビのドラマによく出てた人たちのことは知ってて当たり前だったのに。
ちなみにこの映画の撮影時、轟由紀子はまだ38才。夫が帰ってくる前の彼女は50代くらいの役どころかと思った。(老けた柄の着物のせい)子どもがまだ小さいもんね。夫が戻ったあとは華やいで美しいこと。
新珠美千代のこの役どころは、男の客にからんでは「うっふ~ん、嫌だわ」ばっかり言っててちょっと苦手だけど、この頃の映画によくあるタイプのやり手の女性像です。今はこういう対人スキルを駆使してたくましく生きる女性は少ないんじゃないかと思ってたけど、きっと知らないだけで、経営者とか企業のなかにもたくさんいるんだろうな。
一人ひとりを見ると、普通っちゃ普通なんだけど、監督の視点のやさしさのおかげで、じんわりと切ない作品でした。