映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

小津安二郎「お茶漬の味」2296本目

ノワールといえそうな「東京暮色」を見たあとで「お茶漬の味」を見ると、なんだか教科書を読んでるような気持ちになる・・・。あまりに教訓的な起承転結のある作品です。制作はお茶漬1952年、東京暮色1957年、途中に東京物語1953年などがはさまってる。単純なお説教~そうはいっても世の中は思うようにならない~そんな中で生きていく、みたいな変遷だったのでしょうか。

この映画の小暮美千代は、揺れ動く妻っていう役どころでありながら、いつもなら杉村春子が演じる愚痴っぽいおばちゃんでもある。他方、鈍感でおおざっぱだと思っていた夫、佐分利信は最後に包容力のある賢明な夫だと判明する。おばちゃんは手のひらを返す。

歌う場面が3回出てくる。夫に内緒で出かけた温泉旅館で美しい人たちが「すみれの花咲く頃」を歌う歌劇団のような場面、鶴田浩二佐分利信に向かってスナックのカウンターで外国語の歌を歌う場面。・・・この楽曲については触れられないし、何語だかわからないんだけど、ネットで探ったらドイツの学生歌とするサイトがあった。ドイツかソビエトか、どっちにしても左っぽい感じはしました。最後は笠智衆が歌う軍歌。どれもちょっと演出的すぎる気がするなぁ。

それにしても爽やかで美しい鶴田浩二青年。その後やくざの総長になろうとは・・・(いやそれ役柄だから)

お茶漬の味 デジタル修復版 [DVD]

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