映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

石川慶監督「愚行録」2301本目

重ーいカメラだったな。音楽も。なかなか劇場的で魅力的なんだけど、演技には黒さはまったく感じられなかった。それも演出意図なんだろうか?最近の「イヤミス」が原作の映画の中には、役者さんたちが自身の黒さを出し切って気持ち悪いくらいどろどろとした演技を繰り広げるものもある。それと比べると、しつらえが黒い割に全然重くない映画だった。ちょっと不思議。

やっぱり・・・こういう「スクールカースト」をテーマにしたものって、本当は存在しない枯れ尾花を幽霊と信じることで成り立つ、つまり授業が終わって学校を一歩出たらバカバカしくなる、そんなところがあるから、普遍的な人間を描いたものになりづらいんじゃないのかな?そんな風に思う人って少ない?

どんでん返しも、最初から「3回の衝撃」とあおられたことで逆に予想が働いて、だいたいの結末が想像できてしまったのが残念でした。

蜜蜂と遠雷」を見てこの監督に興味を持ったんだけど、どっちかというと画づくりに熱中してしまう監督で、演技づけがちょびっとだけ甘いと思いました。いい役者さんが出てるんだけど、腹の底から絞り出すところまで役の理解が深まっていないような。でもとても面白い映像制作をする人なので、これからも見ていこうと思います。 

愚行録 [DVD]

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