映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

大島渚監督「青春残酷物語」2303本目

桑野みゆき演じる主人公が、パツパツでチャーミングなんだけど若い子らしく無鉄砲で、見ていてハラハラします。今のほうがこういう子を何とかしようという大人が少しは多くて、探してくれればNPOなんかも見つかると思うんだけど、この時代には「自己責任」どころか「自業自得」としか言われなかっただろうなと思う。だから「青春残酷物語」。

彼女が好きになるのは、のちに良いお父さんなどを演じることになる川津祐介の、フラフラして誠意のない青年。彼は明らかにだいぶ年増の人妻とも関係がある。桑野みゆきが寝たという裕福そうな男性にまでたかり、警察に突き出され、金が必要になってまた彼女を売る。それほど悪気もなく、ただ流されている。

心がしっかりしていなければ、こんな若い美しさは売り物にされるだけで、何の役にもたたない。こんなふうに若さが安く消費されるのは、いつの時代にもあることなのかもしれない、その態様が時代によって違うだけで。この映画みたいなあからさまなアンチクライマックスでショッキングに結末をつけてもつけなくても、食い物にされる人たちっているんだろうな。まっすぐに落ちないで逃げてほしいし、どんな目にあっても生きてほしい・・・