映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

市川崑監督「どら平太」2331本目

市川崑監督、黒澤明らが脚色ですって。すごいけど、それほど構えないで見てもいい、軽めの娯楽時代劇です。

役所広司が主役の「どら平太」。役人だけどわざと不良を装って、街のワルどもを一網打尽にしようと企んでいます。眉毛をキリっと描いてるので、いつもとなんだか違う風貌。19年前なので若い。でもちゃんと、チャラいお奉行に見えます。役所広司の役作りはいつも隙がないです。

その平太に迫ってやって来る浅野ゆう子が、綺麗でカッコいい。この人は着物姿が本当に似合いますね。

宇崎竜童の和服姿も、強そうで似合います。ちょっとせりふが棒読みっぽいけど・・・

文太さんの時代劇は若干違和感あるけど、悪の親玉(情に厚いヤクザじゃなくて、悪い奴)

と、魅力的な役者さんがたくさん出てますが、どら平太が実際のところ、本当はいい奴なのか悪い奴なのかが、よくわかりません。「不良と見せかけておいて、本当はしたたかな策士」?「頭がいいけど品行悪すぎな侍」?複雑な役どころをやると、役所広司はうますぎて、観客も奉行所の同僚や上役といっしょにうろうろしてしまい、安心して楽しんで見られません。これはいいのか、悪いのか?

なんとなく正体がわからないまま、彼は悪者どもを一網打尽にし、菅原文太おやぶんをひれ伏させ、悪代官どもも「ぎゃふん(死語)」と言わせて、一件落着です。

最後の最後まで見ても、男気はあるけど堅気には戻れないし、要は、時代劇にみんなが期待する「スカッとしたヒーロー」じゃないんですよね。その辺が、この映画の評点の平均の低さにつながっている気がします。

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