映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

アリーチェ・ロルヴァケル 監督「幸福なラザロ」2338本目

不思議な映画だったなぁ。

なんでも屋くん」でしかなかったラザロ少年が、高熱に浮かされて崖から落ちて「たぶん死んだ」感じになり、一方、伯爵夫人に搾取されていた村人たちは警察に導かれて村を後にする。数十年後、彼らは都会で食い詰めて詐欺や盗みで生活をつないでいる。狼に食べられずに生き返った、少年のままのラザロは都会に出て彼らと再会する。食い詰めていたのは元小作人だけではなく、伯爵夫人一家も貧しくなっていました。

昔ラザロに誘拐事件をでっちあげるのを手伝わせた、インチキなタンクレディ。(ラザロとタンクレディって名前を並べてみると時代や国が違うみたいで違和感あるよね?ユダヤ人とイタリア人?)彼らのお互いに一方通行みたいな友情とか、元小作人たちに冷たい世間、誰も何も報われない、何のためだったかわからない「復活」。これって聖書のなにかをなぞってるのかな?Wikipediaによると、ラザロが示すものは贖罪と復活、イエスの友人、などとあります。タンクレディがイエスに匹敵する設定だったとも思えない。これは私がたまに映画の感想で使うことばでいうと(いやな表現だけど)「犬死に」の映画だ。製作者の意図がまだぜんぜんわからない。ラザロの崇高な瞳が「フランダースの犬」を思い出させます…教会、犬ではないけど狼、といったモチーフも、テーマの類似性を示してるようで。犬死にかもしれないけど、幸いなるものは死してなお祝福されるのではないかな。絶望的な結末ではない、と私には思えます。

幸福なラザロ [DVD]

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  • 出版社/メーカー: Happinet
  • 発売日: 2019/11/02
  • メディア: DVD