映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

オットー・プレミンジャー監督「月蒼くして」2339本目

監督の名前がタイトルに出ただけで血圧が少し上がるくらい期待が高まるのに、「バニー・レーク」でも見る人を魅了したようなオシャレなタイトル。今ならミシェル・ゴンドリーでも使いそうな文字の端っこが丸くなったカワイイフォント。最新ファッションでいっぱいの百貨店でお買い物とする、完璧なスタイルの女性。ステキ~~。

でもセリフのなかにヴァージンとか妊娠という言葉があるおかげで、論争の的となったんだそうで。こんなにオシャレで可愛らしい映画なのに。でも見てるうちに、このキュートな「しつらえ」の方が違和感が出てきます。展望台でナンパされてすぐに彼の無人の事務所に行く。そのあとさらにまっすぐ彼のアパートへ。そこで情婦だのなんだのと突っ込む彼女は、言ってることは「セックス・アンド・ザ・シティ」なのに容貌は少女雑誌のモデル。クラシックで親が厳しそうな感じの。

…というところに、元カノとその父!が現れる。すぐれて現代的な設定(笑)。軽妙なやりとり。

オードリー・ヘップバーン的なスレンダーな女性はマギー・マクナマラ。あまりハリウッドは合わなかったのかな、若いうちに引退してその後の人生は寂しいものだったようです。ウィリアム・ホールデンは明るくて強い正統派な二枚目としてヒットを飛ばしたけど…やはり晩年はアルコール中毒か。これって個人の問題じゃなくて、当時のハリウッドの問題って言えるのかも?30歳と名乗ってるけど35歳か。なぜか50くらいかと思った…

それでもなんでも、この映画もやっぱりいいな。会話のテンポが心地よくて、プレミンジャー監督の映画はほんとに、体質に合うというか。

元カノ、シンシアもショートカットのブロンドでセクシー。でまた、ワンコの使い方が最高に効果的で可愛い。

タイトルの出どころは、ラストに二人が、昨日会ったばかりなのに結婚するのは「Once in a blue moon」 つまり「めったにない」、と語り合う場面なんですね。最後の最後に「あっそうか!」という場面を持ってくるあたりも、監督のセンスの良さです。日本語のタイトルは正しく直訳だけど、英語の意味は消えますよね、そりゃ…。 

月蒼くして [DVD]

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