韓国の映画やドラマには、必ずお母さんの心配そうな顔と、お母さんが家族にご飯を食べさせる場面がある。過剰な思いはゆがんで発露することもある。日本にもおおっぴらにできないことをやっている人たちがたくさんいるように、韓国にも裏で悪いことをしてる少年少女がいる。一番痛い現実を映画的に誇張して見せるものを見て、そこから私たちは少しでも「ほんとうのこと」に近づこうとする。
あどけなくも見えるウォンビンと、母を演じるキム・ヘジャの演技力。カメラを見つめる彼らの眼力で映画が強くなる。
母が、流れ出る血をぬぐう場面では、「復讐するは我にあり」をなぜか思い出した。似てるわけじゃないと思うんだけど。
あまりに大きなことを言ってもしょうがないんだけど、息子を守るために何の問題もない赤の他人を殺せるって、これは動物的な生存本能なんだろうか。人間は忘れない生き物だから、恨みは連鎖するのに。
昔の悪い記憶を忘れさせるツボって本当にあるのかな。鍼で秘孔を突いたら鍼灸師はさらっと死ねるんだろうか。鍼には即効性があるけど、いくらなんでも早く効きすぎでは…。
ポン・ジュノ監督って、ちょっと違う視点の映画を作るユニークな監督と思ってたけど、この映画はかなりストレートで普遍的な力作でした。
エンドロールの音楽がビリー・ホリデイ「ストレンジ・フルーツ」の間奏みたいだった。何もかも放り出して死を受け入れてしまいそうな音楽。いかん、はまりすぎると取り込まれてしまうので、外に出て甘いものでも食べよう…。