映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

トム・ケイリン監督「美しすぎる母」2367本目

エディ・レッドメインの少年時代を見てみたくて借りたんだと思う、多分。原題は「Savage grace」、野蛮な高潔、とでも訳すのかな。

見る前につい解説を読んで結末を知ってしまったけど、知らなかったらどういうストーリーだと思っただろう?

息子トニー(エディ・レッドメイン)と親しくなるスペイン人少女は、いかにもスペインっぽい小麦色の肌をした明るくて健康な女の子という感じだったけど、実はペドロ・アルモドバル監督の「私が、生きる肌」で完璧な美しさのアンドロイド的な女性を演じたエレナ・アナヤですね。イメージ違うなー。

しかしジュリアン・ムーア。はかなく美しくちょっと壊れた女性を演じさせたら天下一品です。「アリスのままで」しかり。映画のモデルの「母」はとても美しくて魅力的な女性だけど、最初からちょっと壊れてる感じがしますね。

心のままに生きられたらいいな、と、憧れることは誰にでもあるけど、この「母」のようにいつもむき出しでいると、自分も周りの人たちも壊してしまう。逆にいえば、自分が幸せになり、周囲の人たちも幸せにするためには、最低限の嘘は必要ってことか…。

多分事実にかなり忠実に映画化したんじゃないかと思うけど、だからこそあまりドラマチックではなくて、それぞれの人たちは自分たちが壊れてることに気づかないまま、淡々と自分たちの物語を語る。語りなおすのは、生き残った「父」の役割だったと思うけど、ほとんどは息子が書き残したんだよね、きっと。

すごく悲惨だけど、それでもどこか、なぜか、不思議だけど、カッコいい気がする。そのくらい、嘘のない人生に憧れます。

美しすぎる母 [DVD]

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  • 出版社/メーカー: ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント
  • 発売日: 2015/12/16
  • メディア: DVD