映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ポン・ジュノ監督「パラサイト 半地下の家族」2375本目

<ネタバレだらけ注意!>

 

面白いことは面白かったけど、普遍的で深い人間性のような、パルムドール受賞作品に私が期待しているものは、この映画にはあまり感じられなかったなぁというのが、まず、感想です。

息子の治療をもっと瀕死の人より優先する「悪い金持ち」は、貧乏一家に騙されて利用されて殺されてもいいのか?っていう部分が、モヤモヤするのです。この映画に「悪い金持ちを懲らしめてやった!」という快感を覚えるとしたら、それは貧乏人の皮をかぶった金持ちいじめだ。「スノーピアサー」も主人公の独りよがり感が強くて苦手だったけど、この映画も、日本の連続ドラマの主人公にありがちな独善性が気になる…地下で「ほんとに悪いことをした」と息子に手紙を書いたところで、裁きを受けて服役することと比べて反省でも償いでもないのに…。

地下から出てきた男とその妻はこの一家に騙されて追い出された挙句、そろって殺されてしまうわけで、むしろ彼らを主役にしたほうが諸行無常とか格差問題とかが打ち出されて、映画のメッセージ面は強くなったんじゃないか。一人、二人、と家に入り込んでいって、しまいに地下からさらに現れる人がいるほうが、構成的にはインパクトがあるけど。

最後の場面で、この期に及んでまだ地下シェルターが発見されてないなんて、警察は何をやっていたんだ?と思うし、モールス信号のエピソードが、最後の「息子への手紙」のためだけだとしたら、荒すぎてちょっと無理筋。

どこを見てそんなに評価したのかなー。「万引き家族」とはまったく違うジャンルの映画だったと思うけどな。