映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

藤井道人監督「新聞記者」2377本目

映画見すぎてるのに、さらに数年ぶりに「ギンレイホール」年間パスポート買ってしまった。バカか私は。で、記念すべき1作目にこれを見ました。やたら評点が高いけどドキュメンタリーではなく、原案はあるけどフィクション。「半沢直樹」みたいな感情過多じゃないといいなーと思って見ましたが、意外と良かったです。官僚に限らず、日本の大手企業の上の方の人たちの不思議なくらいの隠ぺい体質の表現に、リアリティがあった。ヤバい!という場面で最初から逃げに入るのって、ゲームを楽しんで勝とうと考える他所の民族なり国家なりの人たちより負け戦感が強くて、戦争とかしても勝てる気しないです。自分に自信があれば、大衆を味方につけようとか、少なくとも受けて立とうという意識がないとおかしいけど、実際には小心者ばかりがなぜか上の方にいるから、この映画にリアリティがありすぎて残念です。…ってちょっと感情過多ですね、私のほうが(笑)。

シム・ウンギョンは日本語が怪しいし、表情が能面のように変わらないけど、変わらない表情のなかに知性とか激しい感情が感じられて、不思議と良いですね。ちょっと不器用だけど一本気なこんな若い新聞記者って、いるかもしれない、と思える。

松坂桃李はいつも真摯で好感が持てて良いんだけど、ちょっと、あまりに、いつも演技が同じすぎる気がするので、ここではあえて意外な人を当ててみてくれても面白かった気がします…でもウンギョンさんがかなり意外感があったので、こちらは安定感を重視したのかな。

高橋和也、田中哲司も良かったし、そうか今日本の映画で「男が守るべき妻子」は本田翼なのか。映画の意図があるからだろうけど、ひたすら透明で優しく愛に満ちて可愛いという天使でした。

そして、松坂桃李が仁王立ちして大泣きするみたいな大げさな場面がなくて良かったです。

この映画の製作委員会に朝日新聞社が入っていて、そこで自社の矜持を示そうとしているのかもしれないけど、原案の望月衣塑子は中日新聞社だからね~。

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