映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

フアン・ホセ・カンパネラ監督「瞳の奥の秘密」2392本目

<ネタバレちょっとあるかも>

見終わってから英語のタイトルを見たら、複数形だったのでちょっと驚いた。奥に秘密を秘めた瞳は一人のじゃなくて複数の人たちのだった。25年前に妻を破壊されて失ったモラレスも、25年間の事件を追いつつずっと一人の人を愛し続けたエスポ̪シトも、彼に25年間思われ続けたイレーネも、ずっと強い思いを抱き続けてた。

ハリウッドの映画は、思いはあるけど多少の犠牲はしょうがない、という現実的な落としどころのあるものが多い気がするけど、ラテンの人々は最初から最後まで思いより大切なものはない、という人間性中心の軸がまっすぐ通っているように思えます。いろんなことでわだかまっている観客の自分まで肯定されたようで、なんだか力強い。

愛と憎しみは同じ、というか、裏表だ。自分が愛を持ち続けている25年間、彼の妻を奪われた憎しみがさっぱり消えてなくなるわけがない。と気づいたときに、エスポシトは真相を見抜くことができたんですね。そして、改めて自分の25年間を肯定することができた。

25年間って気が遠くなるような長さだけど、彼らにとっては止まった時間のようなものだったのかもしれない。

こういうラテン的深情けに弱いんだよな~。ミステリーとしても人間ドラマとしても愛の物語としても、とても良かったです。