映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ペドロ・アルモドバル監督「ハイヒール」2403本目

やっぱりアルモドバル監督の作品は面白いなぁ。

必ず「えっ」というようなヒネリが入るんですよね。何本見ても予想できず、毎回驚かされる。そして必ず、とても大きな愛に包まれる。ラテン的な愛憎が新鮮。普通の日本人の私は、いつも誰かの愛情をちょっぴり信じられず、しっかり憎み切れないけど、彼らはちゃんと憎むから激しく愛せるのかもなぁ。

往年の人気歌手の母(マリサ・パレデス、「オールアバウトマイマザー」の大女優ね)は、自分の恋人と娘(ビクトリア・アブリル)が結婚したことで娘を憎むようになる。

この監督の映画では男は常に何かやらかして殺されて、母と娘は愛を確認する。

いつも道徳とか常識は、愛に比べれば二の次で、罪もしばしばスルーされる。それなのに見ているほうはなんとなく納得してしまうのが、監督のストーリーテラーとしての技の見せ所なのかもしれません。

ちなみにタイトルの「ハイヒール」は最後の最後に娘が、半地下の病室の窓を母のために開けてやりながら、「小さいころ、母のハイヒールを部屋からこんなふうに見るのが好きだった」と話す、という形でやっと登場します。それにしてもアルモドバル監督の映画に出てくる女性は全員(オカマも)すごいピンヒールをはいてるよな…。

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