これも「なかなか見られない映画を図書館で見たぞ」シリーズ。
「灰とダイヤモンド」のアンジェイ・ワイダ監督の、名作の誉れ高い作品。ドストエフスキーだし、なんかお宝発見という気分で、エキゾチックな画面を期待していたら…
冒頭すぐオマー・シャリフが出てきてびっくり。ドストエフスキー原作のポーランドの監督の映画にアラビアのロレンスのアラブ人が出てフランス語しゃべってる。(しかも口パクじゃない)これより前に「ドクトル・ジバゴ」でもロシア人をやっているし、チェ・ゲバラ役をやったこともあるので、不思議ではないけど。製作国がフランスだから言葉がフランス語なんだな…こういう座組でロシア革命の映画が作られた背景に、興味を惹かれます。
DVDにとても詳しいブックレットがついるのでよく読んだら、イザベル・ユペールが出てるじゃないですか!なんか怖い顔をした若い娘なのですが、今とおんなじ顔をしています(笑)。ノークレジットらしくどこを引いても出てこない出演情報、なんか得した感じ。
革命派シャートフを演じるイェジー・ラジヴィオヴィッチ は、私がイメージするポーランド映画の人ですね。純粋で思い込みが強く、周囲を巻き込んでいく雰囲気に惹きつけられます。透き通るような青い目が、ケン・ローチ監督「麦の穂をゆらす風」のデミアン、キリアン・マーフィを思い出しました。関連は何もないと思うけど、純粋すぎるゆえの暴走を彼らの美しいまなざしに表現させてる。
ニコライの結婚相手マリア(自殺願望のキリロフの妹)はいつも顔を白塗りにしていてちょっと異常があるという設定。その兄はカラマーゾフのスメルジャコフみたいな男で「私は道化です」などと言い、ニコライから「お前は密告するつもりだろう」などと突っ込まれる。ドストエフスキーだからな、カラマーゾフでも「神がかり」な女がスメルジャコフの母という設定でした。繰り返し悪夢みたいに同じ影が登場する呪い。。。
シャートフが貴族的なニコライを殴打するとリーザが卒倒する場面とか、表現が今見ると大げさで舞台みたい。ハリウッドのメソッドだと怒鳴られそうなくらい。でもこれって多分ワイダ監督の持ち味なんだろうな。デリケートで激しい感情が。
ぶっちゃけ、ドストエフスキーなのでとても難解で複雑で、2回通しで見ても理解しづらかったけど、ブックレットの解説を読んだらよくわかりました。ドストエフスキーってどの本も同じ人たちが立場を変えて何度も登場する感じだな…。見ごたえのある映画だったけど、この難解さと、入手困難さを考えると、誰にでもお勧めできるとはいいづらいですね。。