映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

アッシュ・メイフェア 監督「第三夫人と髪飾り」2424本目

気になることが3つあります。

1、髪飾りはどこに出てきたのか?

答えは、第二夫人が男女の行為のことを第三夫人メイに説いて聞かせるときに、彼女がメイの身体を髪飾りでなでた…という場面だそうです。ネットの記事を見てわかりました。Wikipediaに項目がないし、KINENOTEの情報だけでは「もっと知りたい!」となりますよね。

2、ポスタービジュアルが中身を表せてない

とにかく美しい映像なんですよ。主役のメイは、頬がふっくらして強いまなざしの可愛い少女なんだけど、いちばん怖い顔が使われてしまっています。彼女には強いところもあるけど、純粋な自然さが一番の持ち味なのに。

3、食事の場面があまりにも少ない

不満というわけではないけど、性と生死がテーマの映像作品って、たいがい「食」の場面も多いのに、この映画では婚礼の席でメイがちょこんと座っていたくらいで、食の場面がほとんどありません。だから、夜を経て子どもが生まれても、なんだか妖精の世界みたいでちっとも生々しくないんです。動物や人間が死ぬ場面もあるけど、それも聖なるいけにえのようです。

静かで幽玄ですらある川沿いの山奥で、豊かな養蚕家の一族が暮らしています。世界遺産のチャンアンという場所で撮影したのだそうです。ベトナムの女性はふつうの人も皆つつましく美しい(ホーチミンに行ったときの私の印象)けど、この映画の中の人たちはさらに透き通るように美しい。特にわずか14歳で第三夫人として嫁いできたメイの少女らしさ。少年みたいな好奇心と、生まれたばかりの色香がなんとも官能的でした。

でも、静かななかに起こる出来事はタブーもあって、ベトナムでは公開4日で上映禁止になったんですって。一番の問題は実際には13歳だったメイ役の女優さんが若すぎるという問題だそうです。伝統を重んじる社会だからこんなに美しい文化を残せたんだろうけど、秘密を白日の下にさらすことはいつでもどこでも誰かを傷つけるんだろう。

トラン・アン・ユンが美術監修か、だから美しいのかな?