映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

東陽一監督「絵の中のぼくの村」2426本目

ふたごの物語だけど、タイトルは「ぼくらの村」じゃないんだな。原作があって、それは双子の共著ではなく一人の著書だからか。

田舎の子どもたちの映画って他にもいくつもあって、「菊次郎の夏」とかもそうだし、そういえばゲームソフトの「ぼくのなつやすみ」ってのもあったなぁ。

この映画はジブリっぽいんですよね。木の上の三婆がかわいかったり、いったんもめんみたいに飛び回る布とか、民間伝承とか遠野物語にも通じる。あ、河瀨直美とかも同じ里山系ですね。「となりのトトロ」の宮崎駿は1941年生まれ、東監督は1934年生まれ、原作者の田島征三は1940年生まれなので、日本の里山で過ごした原風景は近いものなんじゃないでしょうかね。もっと言うと、アメリカじゃなくヨーロッパの映画祭の人たちってこういう手付かずの原風景っぽいものが好きだなーと思ってたんだけど、今年の「パラサイト」のパルムドールを見ると、審査員が変わったのか目の付け所が現代の異国に向いたのか、興味深いところです。

この映画も、この前に見た「第三夫人と髪飾り」みたいに風景や暮らしが自然であまりにも心惹きつけるものがあるので、筋はどうでもいいっちゃいいのです。「第三夫人」は主人公が昔のひとで、彼女自身が村を出ることはなかったと思うけど、この映画の場合はふたごが二人とも山を出て都会に行ったから、ノスタルジーが大きいんでしょうね。