映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ペドロ・アルモドバル監督「抱擁のかけら」2433本目

2009年の作品。年代がわかりづらいけど、比較的新しいほうか。

「謎のカバンと女たち」が見たいけど、作り置きのガスパチョを勝手に客が飲もうとすると、薬が入っているので飲むな…見覚えがあるなぁ。「神経衰弱ぎりぎりの女たち」だな。タイトル違うけどこの映画のことだと思っていいですか?

「抱擁のかけら」は、自己で最愛の人を亡くした元映画監督が、愛と仕事を思い出す道のりの映画。ちゃんと作られてるけど、びっくりするほどの仕掛けはなかった。映画監督がずっとシリアスで笑える部分がないのがちょっとつまらない、というか、つらい。信じられないほどの悲劇にもどこか笑いがあるのが彼の映画だと勝手に思ってるので…。

その点、今回もロラ・ドゥエニャスの役は最高ですね。彼女はいつも「まじめで普通だから超おかしい」役をやるけど、今回は隠し撮り映像の口元を見てことばを割り出す専門家。なんの配慮も忖度もなく「あんな最低なじじい」と最低なじじいの前でふつうに言う。

原題は「壊れた抱擁」という意味らしい。そっちのほうがこの映画には合っている気がしますね。