映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

デイヴィッド・リーン監督「ライアンの娘」2434本目

ライアンってアイルランドの典型的な名前なのかな。「Ryan Air」って格安航空が有名なのは、この映画にちなんだものなんだろうか。

この映画は巨匠(作る映画すべて大作という意味でも)デイヴィッド・リーンが力を込めて作ったもので、アイルランドの荒っぽくオープンな人々の普段の生活が描かれていて興味深いです。この映画も2時間半の長尺だけど、30分の連続ドラマ5回分という感じで、テンポが良いので冗長な感じは全然ありません。

ロバート・ミッチャムが…この眠そうな目元は、「LOVE」と「HATE」と指に描いた彼(「恐怖の岬」ですね)を見たときから、腹に何か隠し持った恐ろしい目元にしか見えなくなってしまったのですが、この映画ではあくまでも誠実で妻にとことん愛情を注ぐ男です。疑っちゃいけません。

それにしてもアイルランドの自然は圧倒するものがありますね。超高波が次々に打ち付ける断崖絶壁「モハーの断崖」の迫力といったら。いつか行ってみたいです。

イケメンでデリケートなランドルフも、軍人という責務を負って辛いものがありますね。道化役のマイケルもなにかの役目を負って生まれた者という運命を感じさせます。(スケリッグ・マイケルっていうこの先の美しい島は、スター・ウォーズでルーク・スカイウォーカー翁がこもっていた場所ですね、ああ憧れる)ジョン・ミルズ、名演です。

ライアンの娘、ロージーを演じるのはサラ・マイルズですが、ジュリエッタ・マシーナ(ジェルソミーナ)かと思った(英語なのに)。

村の人たちはマイケルを囲んで大笑いして楽しむ。推測だけでロージーを密告者と決めつけて集団でいじめて腹の底から笑う。「ガキの使い」みたいで、日本人に限らずどこでも人間ってじつに残酷で無邪気で、ここまでくるとこれも一つの人間のサガと捉えて、逃げるしかないんじゃないかという気がしてきます。なんともいえない気持ちになるけど、「親切でやさしい村の人たち」ではないところが、映画としては深みがあります。

アイルランド人って、民族的にはケルト、ゲルマンとか北方の人々で、イングランドと共通の部分が大きいのに、宗教がカトリックというところが、情緒が全面に出る気質と結びついてる気がします。イングランドのプロテスタントと対比しようとしてみたんだけど、よく調べたらイングランド国教会はプロテスタントではなくて、ローマと違う周波のカトリックなんですって?知りたいことがまだたくさんあるな…。

ああ、アイルランドまた行きたい。こんどはとことん全島回ってみたい。