映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ルイ・ガレル監督「パリの恋人たち」2449本目

「グッバイゴダール」でめんどくさいゴダールを自分で演じたガレル監督が、また自分を主役として撮った映画。ゴダールの流れをくむ、女性礼賛にともなう男の卑下をこの映画でも描いています。だって原題は「L'HOMME FIDÈLEA (FAITHFUL MAN)」、従順な男ってところでしょうか?これを「パリの恋人たち」というタイトルで上映するのってフランスのエスプリをなかったものにするような、パリのファッション雑誌でも見て憧れてるんだろうと日本女性をナメているようなマーケティング戦略が、なんか不満。観客をもうちょっと信じてくれないかな。

リリー・ローズ・デップの初々しい美しさ、恋に恋する若さも素敵だけど、元同性相手を演じたレティシア・カスタの余裕と知性がまた素晴らしい。若い女性はこんな大人を目指すと良いと思います(私はもう遅いが…)。結論はそこなんでしょうね。ゴダールは妖精を求め続けたけど、ガレル監督はFaithfulなだけの自分を包み込んでくれる大きな女性を求めるのかな。

マダムの息子を演じたジョゼフ・エンゲル君、まだ声変わりもしてない子どもなのに大人のようなまなざしは何だ。ミヒャエル・ハネケの映画に出てくるような悪い子の役もこなせそうなたたずまい、今後が気になります。

(そういえば、主役の親友で元カノの夫だったポールって留守電メッセージでしか登場しなかったな。。)