映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

オットー・プレミンジャー監督「軍法会議」2461本目

ゲーリー・クーパーってどうも私は印象が薄い。日本人的に真面目できちんとしていてちょっと神経質そう。親しみは感じるんだけど、私は映画にもっと破天荒なものを求めてるのかも。

この映画は、プレミンジャー監督がお得意の”けれん味”を極力抑えて、ストーリーテリングに徹しています。とにかく長セリフの交換が延々と続く、続く。なんだか分厚い小説をいっしょうけんめい読んでるような気がしてきます。字幕だし。

内容は、今見るとまさか!と感じてしまいますが、「USの軍隊は陸軍と海軍しかないので空軍も設立すべき」という論戦が軍法会議にまで発展したという話です。第一次大戦後、1925年が舞台ですが、実際US air forceが独立したのは、第二次大戦後の1947年だったんですね。知らなかった!海軍がNavy、陸軍がArmyでなんで「空軍」を表す英単語がないんだろうと思ってたら、設立の時期が全然違ってたんですね。

日本軍が攻めてくるということをここで予言しながらも、真珠湾で備えることができなかったと。その事実はアメリカ国民にとって、誤解を恐れずに言えば911前の最大の屈辱だった、のかもしれません。

こういう”裁判”を陪審員方式でやると、新しい正解を訴える人が勝つことなんてまずないだろうな。合理性を重んじるあの国の、最新兵器を駆使する軍隊という場でも、こと人間や主義主張が関わってくる場面では、旧体制が勝つことも多いのかもしれません。

しかし、こういう映画で監督の意図に賛同する気持ちって複雑。US空軍がこのとき設立されて、日本の真珠湾奇襲が失敗したとしたら…。どうせ敗戦するならその時点で敗色濃い結果が見えていたら、失うものがもっと少なく済んだんじゃないか。そんな気がしてならないのでした。 

軍法会議 [DVD]

軍法会議 [DVD]

  • 発売日: 2018/05/25
  • メディア: DVD