馬車が木立の向こうから走ってくると、その背後から夢のように美しい陽射しがさしこんでくる。印象的な場面だけど私でも知っているスヴェン・ニクヴィストの撮影ではないようでした。
マックス・フォン・シドーが若い上に「髪を黒く染めて付け髭をつけている(途中で拾った瀕死の男によると)」。
魔術団の老婆がやたら不吉なことを言っていると、瀕死の男が同じ調子の呪いを続けるのが、なんだか呼応しているようでちょっと可笑しい。そんなブラック・コメディなのだと、この映画を評する人もいます。むかし同僚にスウェーデン人がいて、やたらメールが長くてクスリとも笑わない海坊主のような大男だったけど、あとあと聞いてみると「あのときはすごく楽しかった」など言ってたらしい。そんなスウェーデン人の、わかりにくいユーモアいっぱいの作品なんじゃないか、多分。
<以下ネタバレっていうのかな>
途中で拾った男のほかに、魔術団の博士を殺したと思い込んだ執事という2つの死体が手持ちにあったので、医師を脅かすためにインク壺に眼球を仕込んだりしたのは、そういう新鮮な材料を工面したものかもしれない。でも、そういうハリボテなんてまさに魔術団がもともと仕込んでいそうなものだ。怪しい魔術団を貶めようとした人たちは最後に王宮に招かれた彼らを送り出して、ちゃんちゃん。やっぱりコメデイだった、とほっとするのでした。