映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ブラッド・アンダーソン 監督「マシニスト」2482本目

サスペンス映画でいうところの「サスペンス」部分だけを突き詰めて、どうやったら不穏で怖くてドキドキする作品を作れるか?に徹した映画だと思いました。

冒頭に、クリスチャン・ベール演じるマシニストが何か大きな死体のようなものを海に投げ捨てるシーンがあるし、彼自身どうも怪しい。…ここまでクリスチャン・ベールが減量しなくても、もともと痩せた俳優を使っても良かったと思うんだけど、あのクリスチャン・ベールがここまで落とした!という衝撃的な事実が、映画のインパクトを強烈に高めているのも事実です。写真の中と回想場面にだけ登場する、今より若くて少年みたいなクリスチャン・ベールの姿が、現在の眠りたい彼とすごい対比になっています。

<以下ネタバレ>

で結局この映画は男性版「マルホランド・ドライブ」なんだな。

死体のようなものを投げ捨てたのも、追い詰められた彼の妄想の中の世界。アイヴァンは現実の世界には存在しない(横断歩道を渡っていた人?)し、マリアは「その子」の母親。結末に最大の新鮮な驚きを期待して映画を見てしまうのが人情かもしれないけど、この映画の場合は、最初から最後まで出っ放しのクリスチャン・ベールの演技がすごいのであって、結末は縫物の最後の糸止めみたいな、オチをつけるだけのもので良いのです。(←暴論)映画自体の熱量が巨大ではないので、この主演で彼がアカデミー賞を受賞することはなかったと思うけど、ひとりの俳優の演技に注力した映画としては最高レベルだったんじゃないですかね~。 

マシニスト (字幕版)

マシニスト (字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video