映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

イェジー・スコリモフスキー監督「出発」2483本目

冒頭からクールです。白黒の、黒が多い画面に光る街路灯とヘッドライト。ヨーロッパの巨匠の初期の作品、という尖った趣き。

インチキドライバーは「大人は判ってくれない」のあの少年。どんな大人になるのかと思ったら、こうなってました。破天荒な役柄です。行動に規則性がなくて、次に何をやらかすか予想できません。本業は床屋だけど、ポルシェでレースに出たくて出たくて、あの手この手を使って調達しようとします。

ポルシェってかっこいいんですよね。バカ高いし大きいし、そんなにスピード出ても街中ではあまり走れるところない、というぜいたく品で、日本では芸能人以外で乗ってる人あんまり見たことないけど、この頃のベルギーではお金持ちは誰でも乗ってたんだろうか。

何が何でもポルシェを手に入れようとする彼を、たまたま知り合ったミシェルという女の子は面白がって付き合う。彼がかつらを届けたマダムにナンパされるけど、それにはちっともなびかない。つまり…彼はまだ少年なんだな。一見しっかりした若者みたいだけど、素敵な女の子の前でどう振舞ったらいいかもわからない。

その後のこの巨匠の作品との共通点を私は見つけられただろうか?登場人物がみんな”巻き込まれ型”で、主体的な目的や意思があってもなくても、外部要因によって思いもよらない方向に大きく運命が変わっていく、という点かな??