映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ダニエル・ギル監督「モダンライフ・イズ・ラビッシュ ロンドンの泣き虫ギタリスト」2487本目

iPhoneで音楽を聴きながら、スタバのラテを持ってオフィスに通う、そういうモダン・ライフがラビッシュ(くだらない)ってことね。それに対する言葉は「オールドファッション」。音楽はLPで聴く、コーヒーは喫茶店のカップで飲む。そういうこだわり青年が、同じ趣味の女の子と出会って恋をする。二人でいるときは、無人島に持っていきたいアルバムの話とかに夢中になる。

…別れるときは、このCDどっちのだっけ?二人とも持ってるから1枚は誰かにあげたやつとか、どうする?(おっとこのエピソードは映画にない)大雨の中の、完璧に最低なロックフェス。「私もう18歳じゃないの、30よ。」男のほうは夢を追い、女のほうは大人になってスーツで会社に通い始める。出会った頃に乗ってた格安の古いミニを、女のほうは新型に乗り換えている。

トンネルの中で電波が途切れて聞こえなくなっても声を合わせて歌い続けて、トンネルを抜けたらぴったり演奏と合った気持ちよさ!

ブラーとはタイトル以外あまり関係ないけど、音楽が好きな元・若者たちのための恋愛映画だな。私の映画だ。意外と「イテテ!」って感じはないけど、ブロックヘッズのこのTシャツを着てた、マンガの主人公みたいな顔をしたボーカル兼ギタリストを、よく覚えてる。バンド名は「ヘッドクリーナーズ」よりちょっとだけマシだったけど。

「今の時代に生まれたのは間違いだった」って、多分30年前に生まれても同じことを言ってただろうな。CDよりLPだとか、デジタルより真空管だとか。30年前も300年前も、女の方が先に大人になる。できそこないの少年みたいな男が、胸を震わせる歌をうたう。

インチキプロデューサーも良かったですね。彼は大ウソつきだけど、最高のリスナーだったんだな。またロンドンに行って少し長く滞在して、素敵な気持ちになれたらいいな~