映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ガス・ヴァン・サント監督「マイ・プライベート・アイダホ」2494本目

この映画見たのは、30年ぶり近いんだな。

いろんな場面をよく覚えてる。みんなで「ボーーブ!」って叫び合うお葬式とか、ハンスがホテルのフロアランプを抱いて踊る場面、マイクの卒倒のしかた、スコットが好きになる女の子の風貌。一番美しかった頃のリバー・フェニックスの姿。彼のすねたような表情と、ちょっぴり上向きの鼻と、ぐしゃぐしゃの金髪がすごく素敵だった。「スタンド・バイ・ミー」のときはすごく男っぽい少年だったのが、ごつくない、きれいな男の子になったなと思った。この映画で私はキアヌ・リーヴスのファンと自称するようになったんだけど、その前からリバー・フェニックスも好きで、彼がこの先どんな演技をするのかすごく楽しみだった。

 改めて見直すのに当たって、愛読している方々の感想を見てみたら、軒並み評価が低い(笑)。そうか、主役の二人に恋をしてるのでなければ、映画としてはあまり見どころがないのかな。私の思い出の中では、かなりキラキラと輝いてたので、ちょっと苦笑。

昔見たとき、ナルコレプシーという病気のことは色川武大で知っていたけど、役柄ながら急に倒れて寝てしまうマイクが不憫で、おまけに愛するスコットはちょっぴりつれないし女ができちゃうし、すごく胸を痛めたおぼえがあります。私も若かったから。この映画を、ゲイを自覚している孤独な少年が見ていたとしたら、胸の痛さはそんな比じゃなかっただろうな。(←まだグザヴィエ・ドランを疑っている)

アイダホ州の男娼の少年たちって、「ブロークバック・マウンテン」の二人みたいに違和感があってちょっと痛い。マイクという少年はこのあとも、ナルコレプシーを抱えたまま生きていくんだろう。スコットはフードつきのスウェットを着て汚い車に乗る世界に戻ったんだろうか。

地味なロードムービーなのは確かなんだけど、やっぱり主役の二人は映画史に残る美しさでした。私から見れば、ね。

マイ・プライベート・アイダホ(字幕版)

マイ・プライベート・アイダホ(字幕版)

  • 発売日: 2015/12/01
  • メディア: Prime Video