映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ニウ・チェンザー 監督「軍中楽園」2495本目

文字通り、軍の中の楽園。従軍慰安婦を必要「悪」と呼んだり、なかったことにしようとしたり、関係者が一生軍や国を恨んで辛い思いをし続けるのは、とても悲しい。人を殺す軍隊は「必要悪」じゃないのか?介護や看護やセラピストのような、人を癒す仕事にくらべて売春婦は悪なのか?動物を屠殺する仕事は昔差別されていたのが今は名誉回復されているはずだけど、それより売春婦はいやしいのか?…それぞれ説明がつきそうだけど、全部総合すると、それって善悪ではなくて、その時その時の社会規範の問題だから、天動説が地動説にとって代わるようなパラダイムシフトは起こりえない。

娼婦という商売にはそういう本質的な哀しみがあり、寄り添おうとした男たちもそこから哀しいほうの世界に足を踏み入れざるを得ない。台湾に最近増えている、昔の街並みを再現したレトロな名所みたいな、この映画のノスタルジックな美しさは、今の台湾の人たちに感覚的にすっと入っていくんじゃないかな、そうだといいなと思います。

なんか一文が長いな、今回。

軍中楽園(字幕版)

軍中楽園(字幕版)

  • 発売日: 2019/05/21
  • メディア: Prime Video