映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

瀬々敬久監督「楽園」2502本目

ストーリを追うのが辛いですね。わからなさすぎて…。

瀬々監督の作品はどうも、監督の思い入れが強くて、無理を通してしまっているような印象がずっとあるのです。どうにかして、見る人にもう少し親切にしてもらえないものか…。「伝わらなくてもいい」と思って作ってるわけではないと思うけど。

石橋優香は「体が弱くて早逝した妻」の役には健康的すぎて誰だかわからなかったし(どうしても彼女にやらせるなら「昔から体が弱くて」じゃなくて「白血病で急に。それまでは元気だったからショックで」とか言ってほしかったんだよなぁ)、10年がたったという状況があるのに綾野剛の見た目も様子も変わってなさすぎ。10年後にいなくなった女の子って出てきた?あの集落にはそういう年代の女の子なんて、つむぎのほかには誰も歩き回ってないのに、いきなり消えたとだけ言われてもリアルに感じない。…そういうディテールが、小説には事細かに描いていなくても、映像になると100倍くらいないと不自然に見えるから。。。

元は短編集に掲載された別々の2編の小説だったんですね。綾野剛が蕎麦屋に立てこもって事件を起こす場面に佐藤浩市がたまたま群衆の中にいた、という設定でつながりを作ろうとしたみたいだけど、そこはどう考えても「偶然」でしかないので、そこから後は観客に混乱をもたらしてしまいます。 このあと佐藤浩市のほうもいろんな事情で追い詰められていくんだけど、綾野剛事件のときは「村のみんな」の側にいるように見えたあまり特徴のない彼が、極端に追い詰められていくことの説得力がありません。

瀬々監督が特に重視してるのは、「無謬の人間が犯罪を犯すまで追い詰められていく心情」を描き切ること、だと感じています。その執念のようなものはすごく熱く伝わってきて感動的なんだけど、そこに至る気持ちをできるだけ理解したいのが人情なんだよね。私は、いかにもかわいそうとか、いかにも悪い、という描写も嫌いなくせに、物足りないときはこういう勝手なことを言い出すから、まったく我ながら始末が悪い……。

楽園

楽園

  • 発売日: 2020/03/19
  • メディア: Prime Video