映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

スティーヴン・ソダーバーグ監督「バブル」2508本目

ソダ―バーグの初期作品2枚組のうちの1つ。一般の人たちをキャスティングして、彼らの自宅で撮ったんですって。イーストウッド監督の「15時17分、パリ行き」でも思ったけど、プロの俳優たちのほうが生き生きしてるんですよ。普通の人ってだいたい表情に乏しくて、何考えてるかわからない感じ。いい人なのか悪い人なのか、正直なのかウソつきなのか。俳優の役柄なら透けて見えるものが普通の人には見えない。監督は、そういうのを狙ってみたかったのかもしれませんね。

人形のべろんとした頭に人工毛を植え付けるのを仕事として続けるとか、なかなかキツイな。あの町のあの工場に毎日通って、父親とテレビを見るだけの生活。彼女はそれまで長い間、誰かに信じてもらうための嘘をつく必要もなかったんだろう。自分が何者かを自問することも。子どもを持つこともなく孫がいてもいい年齢になって、赤ん坊の人形を作りながら暮らす。子守をさせられながら、嫌なことばかり浮かんでくる。。。

なかなか面白い、実験的な作品じゃないですか。ソダ―バーグ監督って、メジャー作品もこういう実験作も、俗っぽくはなくて、いつもわりと面白くて、でも特徴がつかみきれないところはあるな。