映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

リーヴ・シュレイバー 監督「僕の大事なコレクション」2525本目

昔見たけど、いまSNSで流行ってる「7 days books challenge」というやつで、自分の7冊のうち1冊をこの原作本にしたので、改めて見直してみました。

<ネタバレあり>

原作のほうは、昔話を英語の下手な人が英語で語るような、ユーモラスでふわふわしてお話なんだけど、途中からウクライナで起こったユダヤ人虐殺事件が関わってきて、最後に向かってどんどん重くなっていく、胸にズシーンと残る作品でした。映画のほうは、昔話のほうをまるごと端折っていて、現在の「アメリカ人作家が自分のルーツ探しにウクライナに来て、地元の英語の下手なガイドとその祖父ドライバーが彼を案内する」という部分、およそ原作の半分以下しか映画化されていません。半分だけでも寓話めいていて、ちょっぴり重さもある作品になってますが、ドライバーの祖父の立ち位置がまるきり違う。映画のストーリーだけでは彼が風呂に沈む理由はありません。

原作では、「トラキムブロド」という、アメリカ人作家の祖父のふるさとの町ができた経緯や、そこがトラキムブロドと呼ばれるようになった逸話とかが語られてるんですよ。ナチスの暴虐の部分も、ただひたすら攻撃されただけじゃなくて、村の人に隣人を告発するように仕向けて、誰が裏切るかという恐ろしいゲームをやらせた。「ソフィーの選択」のソフィーのように、ガイドの祖父は自分で自分の行く道を選んだんです。その重さが、この小説のほかの部分のおとぎ話との対比でショックだった、というのがこの小説の感想なので、ここまで端折ってしまうと何を映画化したのかよくわからない気もします。何が何でも小学生に見てもらえる映画にしたかったのか?

でも記憶がうろ覚えだったので、見てみてよかったです。本のほうも最初から最後までちゃんと読み直してみよう…。

僕の大事なコレクション (字幕版)

僕の大事なコレクション (字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video