尖ってるなぁ。純粋だなぁ。このとき寺山修司36歳。父親が戦死するという経験は今の若者にはないけど、青森の田舎で育つことや、個人を無視した社会のシステムに取り込まれることの無情は今とそれほど変わらないんじゃないだろうか。でも、今の36歳もこんな映画を作るかな、作れるかな、と思うと、これほどの重力のあるものが生まれてくる気がしません。
この映画のすごいところは、監督が寺山修司っていうだけじゃなくて、撮影があの、山本寛斎を着たデヴィッド・ボウイを撮ったスチルカメラマンの鋤田正義だったり、当時最先端だった浅川マキだの鈴木いづみだのが出てたり、音楽は荒木一郎やら美術は林静一やらと、なんだか大変です。(「彼」はあの平泉成じゃないですか。若い)
内容は雑多というより盛りだくさんです。やりたいことをたくさんやった、という感じ。
1970年のこの人たちは、2020年までに何をして過ごしてきたんだろう。こんなにすごいエネルギーがあふれてるのを、何かの形にできたんだろうか?ロンドンパンクみたいだけど、ジョニー・ロットンはお腹の出たおじさんになってる。そもそも、将来何かになるためのエネルギーなんじゃなくて、このときがピークだったからこんなにすごいのかな。
「理解」とか「共感」とかはできないけど、面白かった。若い人のわけのわからないエネルギーって大好きです。