ジギー・スターダストの頃までのボウイを「スパイダーズ・フロム・マーズ」として強力にサポートして、1993年に亡くなったミック・ロンソンについてのドキュメンタリー。
デヴィッド・ボウイはすごく素晴らしいアーティストだし長く第一線にいつづけた人だけど、グラムロックの中ではT.レックスに激しく入れ込んでた私なので、昔の映像を見ると懐かしい隣のクラスを見てるみたいな感じがしますね。
「イエス」のリック・ウェイクマンが、ミック・ロンソンによる編曲の妙について語ってる場面ですごく共感してしまった。A→B→C→ここでAに戻りそうなところなのに全く違うコードへ!…といった、ウェイクマン言うところの”Cinematic”なドラマチックな展開がボウイの魅力ですよね。こういうのはボウイの独特な世界だと思ってたけど、思い返してみるとジギー以降のボウイの音楽にはこのロマンチックなマジックはない。プロレスラーみたいに頑強に見えるギタリストの繊細さを垣間見ました。
…みたいなちょっとマニアックな話が続く、ファンが聴くラジオ番組みたいなドキュメンタリーなので、ファンじゃない人が「映画」だと思って見るとガッカリするかもしれません。
「モット・ザ・フープル」のイアン・ハンターの今の姿が痩せてて若くて驚いた!セックスピストルズにいたグレン・マトロックが、ハリウッド映画で会社社長役でもやりそうな上品なロマンス・グレーになってるのは笑ってしまった。でもボウイもミック・ロンソンもルー・リードも鬼籍だ。
昔の音楽ってロマンチックだな。
自分が多感だった少女のころにときめいた音楽や映画を、年を取ってからも聴きたがったり見たがったりするのは、飽きかけたものを見て感傷に浸りたいんじゃなくて、そのときの感動がそのままよみがえるからだな。新しいものってだんだん入ってこなくなってくるし、良いものも少女時代みたいには大きく感動できなくなってる。音楽は可聴領域が明らかに狭くなるっていう問題もあるし、私の場合音楽はぱったり聞かなくなってブランクが長いからかもしれない。映画はがっつり見始めたのがわりと最近なのが私としてはラッキーで、今、新しいものでも古いものでも感動できる。子どもの頃からずっと映画館に入り浸ってた人たちより出遅れてると思ってたけど、それぞれのスピードで楽しめばいいのかも。