哀しい、切ない、美しい、映画でした。万人が納得できるような勧善懲悪がもたらされないこの映画で、監督は何を表現、あるいは伝えようとしているんだろう?とても、そこに興味があります。
<ネタバレあります>
父親に罰が下されないこともモヤっとするけど、いちばん切ないのは優しいスコットランド人(イギリス人とは言わないのね、ヨーロッパではイングランドとスコットランドは明確に普段から区別されてるのかな)のドライバー一人が犠牲になること。アニエス・ベー監督の視点はどこにあるんだろう。少女か、その母か?
ドライバーはなんとなくケン・ローチの映画に出てきそうな、懸命に生きても世の中の犠牲になってしまいそうな人に見えます。
彼の”犬死に”は、「彼女がその名を知らない鳥たち」みたいです。今の自分の人生に唯一、光をもたらしてくれた花のために、自分は散りたい。と思えるとしたらそれってすごい。でも他の人たちから見て、そこまでの犠牲は、彼女の不幸をカバーしても有り余る。納得できるものじゃない。あえてこの映画で彼にこんな犠牲を払わせた監督の気持ちを知りたいなと思います。
音楽は、一流どころが提供していて贅沢なんだけど、流れる場面は家出少女と自滅に向かってトラックを走らせる移民ドライバーです。目の覚めるような美男美女がロンドンのルーフトップバーでたわむれてるんじゃなく。なんだ、私が家の近くでバスに乗ってるときに流したっていいんじゃん、というような不思議な気持ちにもなります。
白塗りの日本人舞踏家はエンドクレジットにAyaとDakeiとあります。調べたら表記は亞弥さんと雫境さんと書くようです。映画のなかでは自然のなかにいる野生の生き物か森の精霊みたいで、よくわからないけど綺麗でした。
2020年5月17日までUplink cloudで無料配信中です。あと1日しかないけどよろしければご覧になってみてください。