映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

山田和也監督「プージェー」2544本目

ちっちゃいおさげの女の子が、堂々と大きな馬を乗りこなしてる。カメラを向けると、馬が嫌がるから遠くへ行けと怒る。このりりしい女の子がこの映画の主人公です。

素朴な遊牧民の暮らし。「ゲル」の中は暖かく快適そう。解体したやつは、トラックで一気に運ぶんだな。昔はラクダが運んだんだろうか。この映画には音楽もないし映像効果もないし、知り合いの旅行のビデオを見てるみたいです。エキゾチックだけど懐かしいようで、ずっと見ていたくなる。続きをもっともっと。

彼らはこうやって彼らの昔ながらの暮らしをしてる。だだっ広い地平線に向かって毎朝毎晩牛たちを移動させる生活。雪の残る地面。顔はいつも強風にさらされてカサカサに日焼けする。 

国には国の都合もあるんだろうけど、他の国の政府がモンゴルを制圧したわけでもないのに、自国の政府が遊牧民をあまり十分に保護してないように見える。彼らは税金をあまり納めない仕組みになってるんだろうか。どんな国なんだろう。

映画を見終わってから、ずっと気持ちが沈んでます。ドキュメンタリーを見て、こんなに悲しい気持ちになったことないです。お父さんはもともといない、お母さんも行ってしまった、家畜たちもどんどん減っていく。

プージェーも…

そしておばあちゃんの優しい微笑みも…

たまたま日本からの冒険家が出会った一家族だけをどうこうしてもしょうがないんだろうけど、探検家 関野吉晴さんには強い思いがあっただろう。一度彼らのことを知ってしまったら、私ももう素通りできない。彼らが少しでも幸せにこのまま暮らしていてほしいと思うばかりです。