映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ジェリー・シャッツバーグ 監督「哀しみの街かど」2569本目

 日本ではこれがアル・パチーノのデビューなのかな。ちょっとキャラ濃いけどまだ若いチンピラって感じです。真面目で一途な表情で人をじっと見るんだけど、どうも真っ当に生きていくように見えないのが彼の特徴です。だけど優しいので、若いヘレンは彼をだんだん好きになってしまいます。優しければヤクの売人でもいいの?…見てて抵抗があるけど、それと同時に、なーにも考えないでゆらゆらとこんな生活をしたら楽しいのかな、と思ったりもします。

案の定二人はクスリで判断ができなくなって、身体かクスリを売るだけのその日暮らしに落ちていきます。中毒者のヤバい感じが強まっていき、最初は素朴な女の子だったヘレンが荒んでいきます。演技なのにすごいなぁ。この子の、善にも悪にも何の抵抗もなく、来るものを受け入れていく感じ。人生の計算をまだ始めていない子どもの純真さです。そんな彼女をボビーは愛している。刑務所に入ってよかったんじゃないかな。どこか田舎に行ってクスリから足を洗って彼らは生きていけたんだろうか。どこでどう生きたとしても、この二人が本当に憎み合うことはない気がするのが、救いですね。

哀しみの街かど [DVD]

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  • 発売日: 2005/07/22
  • メディア: DVD