映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ルパート・ジュリアン 監督「オペラ(座)の怪人」2571本目

ロン・チャニー出演で1925年制作の無声映画。KINENOTEでは「オペラの怪人」、TSUTAYAのDVDタイトルは「オペラ座の怪人」となっています。このDVDは淀川長治の解説入り。懐かしいなぁ。私が知ってる彼は、頭は白かったけど、もっともっと若かった。昔は最初に解説がないと、外国の映画の世界に入っていくのは難しかったのかもなぁ。

サスペンスものを白黒、サイレントで撮るっていうのは、必ずしも「不足」ではなくて、スリリングな、あるいはおどろおどろしい効果があって素敵です。

オペラ座の階段状の舞台、装飾された客席、屋上の天使像、地下に怪人が用意していたクリスティーヌのための部屋…いろいろと美しくて目をそらせません。怪人の形相も印象的。とにかく、すべての画面が綿密に設計されててとても美しい。楽屋から地下の隠れ家まで、馬に二人で乗っていくなんて!

この映画の場合、怪人がどういう生い立ちでどうやって生計を立てているのかは、明かされないままなのかな。最後めちゃくちゃあっけなくて気の毒なほどです。昔の映画ってこういう大衆によるリンチ殺人で一件落着って、ときどきあります。今みたいに何でもかんでも情報共有できてしまう時代ではなかったので、戦争のときの敵国のような「絶対悪」をみんなでとっちめる、という勧善懲悪の在り方が、見る人を慰めたってことなのかもしれません。

とても面白い、よくできた映画でした。