映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

中川龍太郎監督 2586本目「わたしは光をにぎっている」

これはどういう映画なんだろう。この監督の作品は初めてです。もう見た方々の感想を見ると、めっちゃ点数低い人と100点の人がいる。予想できない(笑)

主役の松本穂香、見たような見ないような…プロフィールを読んでやっとわかった。「ひよっこ」で有村架純がクイズ番組で最後に叫んだ「すみこー!ハワイ行くぞー!」のナバタメスミコだ。憎めないいい役でした。この役にしろこの映画にしろ、地方で暮らしてるちょっと可愛くてマイペースな女の子って、なんともいえず、好きだなぁ。

でも、居候先の銭湯で、主人が掃除してるのをぼーっと突っ立って見ている民宿の娘があるかい。(笑)祖母と二人で切り盛りしてたって設定なのに。じゃあ何屋がいいかというと、タバコ屋くらいかなぁ…。

最後まで見てやっと、ああこれは再開発で失われるデリケートなものを描きたかった映画なんだ、ということがわかる。しめくくりだけを担う、ぽっとそこに現れる女の子は、ぼーっとした純粋な田舎ものでなければならず、かつ、最後を取り仕切るべく急に奮発できなければならない。妖精的な存在なので設定にはハナから無理がある。でも、リアルっぽく見えるけどおとぎ話だからしょうがないのだ。

正直なところ、この映画よりずっと「ドキュメント72時間」のほうが泣ける。毎回、なんで泣いてるのか全然説明できないけど、エンディングテーマが流れ出すと泣けてくるのだ。なんでもない普通の人たちの普通の生活に一瞬混ぜてもらえて、それだけでよかった、って。

この映画は、表現したいことと知っていることのバランスが悪くて、ちぐはぐな感じがある。これは30歳の若者がこの町で暮らしつくした100歳の映画監督になる頃には、自然と溶け合っていくものなのかもしれません。 希望の光だけがみんなを照らすわけじゃない、光をタイトルにしなくてもちゃんと彼らはそれでいいんだ、って思える頃には。

わたしは光をにぎっている

わたしは光をにぎっている

  • 発売日: 2020/06/03
  • メディア: Prime Video