作ったっぽいこの人形劇のような絵作りが、三谷幸喜かウェス・アンダーソンのようです。やけに愛嬌のある「アドルフ」を演じてるのは、監督自身なんですね!
ここまでナチスをコメディにできる時代が来たのか…。監督はユダヤ系ではあるけどマオリも混じったニュージーランド人という、ドイツからの遠く離れた距離感が、寓話性を高めた勇気のもとになっているのかもしれません。
ジョジョ君はおっちょこちょいで可愛い。母親役をやる貫禄がついたスカーレット・ヨハンソンは気の強いお母さん役にぴったり。「スリー・ビルボード」のときは怖いくらいワルが身についてたサム・ロックウェルは今回も怖い軍曹にぴったり。彼はこのあとゲイリー・オールドマンのように歳を重ねていきそうです。
正しいことも間違ったこともこの映画の中では描かれているけど、最後の最後に、さあこれをどう収める?というところで、もしかして、まさか…と思ったら<以下ネタバレ??>踊りオチでした。映画「アンダーグラウンド」と同じだ。答も解決策もないから踊るしかない。現実。
最後の最後に「ヒーローズ」を流すなんて、ヒキョウだわ。しかもドイツ語版。この曲がベルリンの壁の崩壊の口火を切ったと言われて久しいけど、元来ボウイはベルリンに滞在して作った「三部作」があるくらいで、ドイツとは縁が深い。この場面に使われることをきっと喜んだろう。
可愛さが最後に残るいい映画だったけど、もっと痛くて黒くて耐えられないことをこの戦争でナチスはやってきたわけなので、このオチで安心するだけじゃダメだよ…と、これ以外の戦争映画を見てない人には、言いたくなっちゃうなぁ。
(追記)いやむしろ、本当に怖い戦争映画は怖すぎて見られない人でも「マイティ・ソーの監督の新作」として見られることってわりと重要なのかも。監督の思い切ったコミカルな演技も、チャップリン「独裁者」での描き方や、作られた年代を考えれば今ならチョロいのかもしれません。こういう映画を作り続けてヒットさせ続けることの意義を考えて、点数もちょっとプラスしときます。